Q1 買うと高いのでコピーさせていただけませんか? |
お断りします。
日本でのフルセットの実売価格は5万円ちょっと。同曲の他のアレンジ譜よりも少し高いかもしれませんが、仮に50人のバンドだと一人あたり1000円ちょっと。練習の後にみんなでファミレスに行くのを1回だけ我慢すれば良いのです。
違法なコピーはやめていただきたいですし、そもそもfrequentとまではいかないにしてもちょくちょくこういう問い合わせがあることが悲しいです。
Q2 分売はされていますか? |
「キエフの大門」だけの版が2006年に出版されました。他の曲の分売の予定はありません。
Q3 コンクールの自由曲向きでしょうか? |
私としてはこれがコンクールの自由曲に使われることはまったく想定していなかったのですが、すでにいくつかのバンドが自由曲として取り上げてくださって、審査員から好評を得たとの報告を受けています。だからと言ってコンクール向きかどうかはわかりませんが..。M.ラヴェル版を移したものと勘違いした審査員がいて「原曲に忠実でないからダメ」なんて書かれても知りませんよ。
高橋版以前にこの曲を自由曲として使う場合は最後の2曲、つまり「バーバ・ヤガー」と「キエフの大門」が定番ですね。でもこの2曲で約9分かかるので、主として「キエフの大門」をカットする必要があるでしょう。
課題曲が長い年は「キエフの大門」(6分弱)だけという手もありそうですが、これだけだと音楽的な変化に乏しいですね。
以下、いくつかの組み合わせで演奏時間を計算してみました。プロムナード(1)
侏儒
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ 6分10秒
雰囲気のあるちょっとマニアックな選曲。面白いかも。プロムナード(1)
侏儒
プロムナード(4)
卵の殻をつけたひなどりのバレエ
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ 8分30秒
上記の選曲に2曲追加。課題曲が短ければ何とか間に合うかも。音楽的な変化量は申し分なし。古城
卵の殻をつけたひなどりのバレエ
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ 7分10秒
イングリッシュホルンのソロをフィーチャーした選曲。もし時間に余裕があれば冒頭に「プロムナード(2)」(約1分)を追加しても良い。チュイルリー
ビドロ
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ 5分30秒
ユーフォニウム(またはトロンボーン)のソロをフィーチャーした選曲。チュイルリー
ビドロ
プロムナード(4)
卵の殻をつけたひなどりのバレエ
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ 7分40秒
上記に2曲追加。この組曲の中央部分をそっくり演ることになる。チュイルリー
キエフの大門 6分40秒
「チュイルリー」で木管のテクニックを、「キエフの大門」でトゥッティのパワーとサウンドを聞かせようという選曲。卵の殻をつけたひなどりのバレエ
キエフの大門 7分00秒
これも「卵の・・」で木管のテクニックを、「キエフの大門」でトゥッティのパワーとサウンドを披露。プロムナード(5)
リモージュ
キエフの大門 8分30秒
課題曲が短ければ少し「キエフの大門」をカットして間に合うかも。M.ラヴェルがカットした「プロムナード(5)」を使うという意表をついた選曲。しかし「リモージュ」から「キエフの大門」に入る瞬間にはちょっとズッコケるかも。(笑)
「プロムナード(5)」で各セクションの音色のコントラストを、「リモージュ」でテクニックを、「キエフの大門」でトゥッティのパワーとサウンドを披露。他にもまだまだ組み合わせはあるでしょう。曲の順番にこだわらずに組み合わせてみるのも面白いと思います。良いアイデアがあったらぜひ教えてください。
Q4 とても指定の楽器を揃えられません。小編成バンドでも演奏できますか? |
スコアの段数が多いしオーケストレーションが薄い部分も多い。たしかに一般的な「小編成向き」にはほど遠い楽譜に見えます。しかしどんなに小さな編成のバンドでも演奏できます。優れた奏者が揃っていれば、ですが。
編成が充実したレメンス音楽院シンフォニックバンドのために書いたものなので、かなり挑戦的な編成になってしまいました。初演とレコーディングでは60名以上で演奏されました。
確かに大編成ではありますが、必ずしも大人数である必要はありません。むしろ各パートの人数は多くない方が良いかもしれません。オプション以外のすべてのパートを揃えても45名程度で演奏できるはずです。
原曲はピアノ曲ですから必ずしもすべての楽器が揃わなくても大丈夫です。むしろ楽器指定はマックスだと考えても良いです。「展覧会の絵」のページに編成表がありますが、「*」が付いているパートはキュー(小さな音符)を利用すれば省略可能です。また打楽器とハープとピアノも適宜省略可能です。
キューを利用してこの楽譜に手を加えずに演奏できる最低人数は35名程度と考えています。35名以下のバンドでも楽譜に手を加えれば演奏可能です。
さらに究極の攻略法があります。原曲のピアノをかぶせて演奏するのです。そうすればどんな小編成バンドでも音が足りないということはあり得ません。そして練習を進めていく段階で適当にピアノの音を減らしていくのです。その方法ならたった1人の管楽器奏者とピアニストでも演奏できるはず。(笑)
チェレスタやクロテイルなど、高価な楽器を持っているバンドは多くないと思います。マレットを工夫すればグロッケンシュピールなどで代用しても十分に効果があるでしょう。その場合、グロッケンシュピールは実音よりも2オクターブ高く響く楽器であることをお忘れなく。
Q5 オプションの楽器も揃えたほうが良いですか? |
コントラバスーンと Eb コントラバスクラリネットはヴァンデルロースト氏の要望で追加したものです。スコアにもパート譜にも書かれていませんが、これらはオプショナルパートで、独立した音は与えられていません。
ヴァンデルロースト氏は「今のバンドを想定してはいけない。20年後か30年後のバンドを想定して書け」と私にアドバイスしました。ヨーロッパのバンドの編成は日本とは逆に大きくなりつつある傾向なので、今は普及していない楽器も書いておくべきというのが彼の考えです。
さらにレメンス音楽院シンフォニックバンドでの初演と CD のレコーディングではバス・サクソフォーンも追加されています。これはヴァンデルローストが作ったもの。 CD で低音木管楽器群がとてもパワフルに、時に少しワイルドな音で聞こえてくるのはそのためです。
オプショナルパートはもちろん省いても差し支えありません。しかしこの編曲ではメロディーをトランペットやクラリネットなど様々な音色を使うのとまったく同様に低音楽器にも様々な音色を要求しています。特に低音の木管と弦バスはこの編曲ではたいへん重要ですし、パワーも欲しいです。可能ならば、ですが。
Q6 小編成用のバージョンを作る予定はありますか? |
その予定はありません。Q4の答えに書いたとおり、どんな小編成バンドでも優れたメンバーが揃っているのなら演奏可能と思います。しかしいずれ室内楽と吹奏楽の中間的な編成、つまり15人程度の編成でまったく別のコンセプトを持ったバージョンを作りたいとは考えています。実現するかどうかはわかりませんが..。
Q7 「ビドロ」のソロはトロンボーンにも小さな音符が書かれていますが? |
このソロは、はじめはトロンボーンに書いていたのですが、この編曲を献呈したヴァンデルロースト氏から「トロンボーンでは違和感がある」と意見がありユーフォニウムに変更しました。もともとトロンボーン奏者だったヴァンデルロースト氏の意見だけに説得力がありますね。しかしバンドによってはトロンボーンのほうがベターなこともあるでしょうし、選択を演奏者に委ねる意味で小さな音符をトロンボーンに残しました。ユーフォニウムだと牛車の重さなど情景の表現に、トロンボーンだと抑圧された人々の心の痛みを表現するのに向くように思います。
ユーフォニウムとトロンボーンのどちらにも同等に優れた奏者がいて、かつ全曲を演奏する場合にはどちらかと言うと私はトロンボーンを勧めます。ユーフォニウムには短いながら他にソロがありますがトロンボーンにはないからです(トロンボーンには「カタコンブ」など活躍する場面はあるのですが、歌うソロは他にないのです)。
ぜひ悩んでください。
Q8 「ビドロ」が pp で始まるのはラヴェルの真似? |
原曲は ff で始まっていますが、高橋版では M. ラヴェル版と同様に pp に変更しています。原曲のウィーン原典版の解説の中で V. アシュケナージはこれが間違った解釈であると指摘しており、V. アシュケナージによるオーケストラ編曲では原曲通り ff になっています。
この音楽が牛車がやってきて去ってゆく情景の描写ではなく抑圧された人々の心の痛みを表す音楽であるとの V. アシュケナージの解釈には私も賛成します。当然のことながら私も ff で開始すべく構想を練りました。が、それはできませんでした。
白黒写真には表現できてもカラー写真には表現できないものがあります。白黒写真は見る人のイメージを拡張しますが、カラー写真は見る人のイメージを限定してしまうからです。ピアノとオーケストラ(または吹奏楽)にも同じことが当てはまります。「心の痛み」のように内的なものをオーケストラや吹奏楽で表現することは難しいのです。V. アシュケナージによるオーケストラ版とて私には V. アシュケナージによるピアノ演奏ほどの強い説得力が感じられません。
決して安易に M. ラヴェルを真似たのではありません。私なりに熟考に熟考を重ね、この楽章の本質を表現するための編成としてオーケストラや吹奏楽はピアノに敵わないという結論に達し、情景描写に変更しました。敗北を認めます。しかし情景描写としては成功したと自負していますし、演奏によってはある程度は心の痛みも表現できると思います。
Q9 「キエフの大門」のエンディングは原曲よりも長いようですが? |
その通りです。はじめは原曲通りの寸法、つまり M.ラヴェルのオーケストラ版よりも短かったのですが、ヴァンデルロースト氏から「あなたの編曲は正しい。しかし M.ラヴェルの編曲は親しまれている。熟考を」と意見がありました。M.ラヴェルと同じ寸法にするのも癪だったので「えぃやぁ!」と10小節も延長しました。(^-^;)
トニックのコードだけで何小節も続くのでくどさが感じられるかもしれません。解釈によって適当にカットしても良いです。
Q10 原曲よりも短い箇所があるようですが? |
その「原曲」というのは原曲ではなく M.ラヴェルのオーケストラ版のことでは? M.ラヴェルは何カ所か小節を加えたりカットしたりしているのでそれに耳が慣れていると違和感があるかもしれません。高橋版はエンディングを延長しているのみで、他は原曲と同じ寸法です。
なお CD では「ババ・ヤガー」に2小節のカットがあります。これはレコーディングの時点でカットしていたものを出版譜では復活させたためです。
Q11 原曲と違う音がありますが、ミスなのでは? |
「展覧会の絵」はムソルグスキーが晩年に病床で作曲したもの。十分な推敲ができる状態ではなかったようです。しかもムソルグスキーは和声など理論に長けた作曲家ではないので、意図的に衝突させているのかそれとも単なるミスなのか判断に苦しむ音や、臨時記号もはたしてそれで正しいのかどうかの判断が難しい音が多く含まれています。原曲(ピアノ)の楽譜も版によって異なっている箇所がいくつかあります。
この編曲はウィーン原典版に基づいて制作しました。私の解釈で和音を充填している箇所は多くありますが、和声の粗野さもまたムソルグスキーらしさと考え、ほとんど音の変更はありません。ただ、重厚さを増す意図で19世紀には御法度だった連続5度を作った箇所はいくつかあります。
「プロムナード(3)」の冒頭4拍目のベースラインの音は A♯から F♯に変更しています。これは F♯にしたほうが旋律とベースラインがホルン5度になり響きが良好になると判断したためですが、かなり迷いました。原曲通り A♯でも良いですね。
M.ラヴェルのオーケストラ版ではかなり変更されている音が多いですから、それに耳が慣れていると原曲通りの音が間違っているように聞こえることがあるかもしれません。たとえば「サミュエル・・」では M.ラヴェルはかなり大胆な音の変更をしています。
音の変更については指揮者の判断に委ねます。
Q12 「侏儒」の拍子が原曲と違っていますが? |
音符が演奏者に与える視覚的な緊張感やスピード感を考慮して原曲の 3/4 拍子の部分を 3/8 拍子に変更しました。またアクセントの位置を考慮して 2/8 拍子を織り交ぜた変拍子に変更しています。もしムソルグスキーが現代の作曲家ならきっと変拍子で書いただろうと想像するからです。
しかしあまりスマートに演奏してしまうと侏儒のグロテスクな歩行の描写にはなりません。もともとは 3/4 拍子であることを頭の片隅に置いて演奏してください。
Q13 楽譜とCDで音が一致しない箇所がありますが? |
2カ所あります。ひとつは「卵の殻をつけた・・」の内声の音。レメンス音楽院でのレコーディングの時点では原曲の音を変更していたのですが、その後に気が変わって原曲通りに戻しました。
もう1カ所は「ババ・ヤガー」。CD のほうが2小節短いです。これも同様にレコーディング後に原曲通りに戻しました。
また CD では鍵盤打楽器で1オクターブ違う音がいくつかあります。これはレメンス音楽院が所有する楽器では音域が足りなかったためです。
Q14 ところどころに1オクターブ重ねて小さな音符が書かれていますが? |
バス・クラリネットなど、メーカーや機種によって低音の音域が違うものがあるのでそう書きました。1オクターブ違いではない音もあります。大きい音符の音のほうが望ましいですが、出ない場合は小さい音符の音を演奏してください。
そのパートに2人以上の奏者がいる場合に両方の音を演奏するという意味ではありませんのでご注意を。
Q15 難しい調が多いです。何か攻略法は? |
全曲を通して演奏することを前提に制作したのでどの楽章も原調です。そのため吹奏楽では演奏が難しい楽章があります。以下のように移調して演奏すればかなり楽になりますが、曲が変わる瞬間の違和感は避けられません。
「古城」は♯5つの嬰ト短調。半音下げれば♭2つのト短調になりますが、イングリッシュホルンの指使いは手の小さい奏者にはちょっと辛くなるかもしれません。
「チュイルリー」は♯5つのロ長調。半音下げれば♭2つの変ロ長調になります。
「ビドロ」は♯が5つの嬰ト短調。やはり半音下げれば♭2つのト短調になり、ユーフォニウム(またはトロンボーン)のソロも音域が少し低くなって演奏しやすくなります。しかし伴奏の低音楽器群はそれぞれの最低音域を使っているので、半音下げると音域外になってしまう音がたくさんあります。
「古城」と「ビドロ」の2曲は半音下げたバージョンもあります。希望の方には実費でお分けします。メールでお問い合せください。ただし当然のことながら、正規に楽譜を購入した方に限ります。
Q16 打楽器の移動が激しいですが |
ティンパニと打楽器は合わせて5名で演奏できるように書いてありますが、5人ではかなり移動が忙しいです。6人以上の打楽器奏者がいればだいぶ楽になります。また奏者一人ひとりに得意な楽器、不得意な楽器もあるでしょう。そのような場合、担当する楽器の組み替えが必要になります。
フルセットを購入してくださった方には私から打楽器セクションのスコアを実費でお分けします。詳しくはメールでお問い合わせください。
Q17 鍵盤打楽器が難しくて演奏できません |
Percussion 4 と Percussion 3 の一部にはかなり難しいパッセージがあります。
「バーバ・ヤガー」のシロフォンの同音のキザミはトレモロでなくせばいくぶんは楽になります。もちろん楽譜通り演奏できればそれに越したことはないのですが、大きな問題ではありません。
んー、あとは練習で克服するしかないですね。
Q18 ティンパニの Rim shot とは? |
「33」の1小節前の "Rim shot, w/stick" ですね。この楽譜中 "w/" は "with" の略です。つまりティンパニのマレットを逆に持つかスネアドラムのスティックでリムショットをすることを要求しています。耳に痛みを感じる、かなりショッキングな音がするはずです。
はっきり言ってヘッドに悪いです。楽器にも良くないです。マレットが折れるかもしれません。もし楽器がかわいそうでできないということでしたら通常の奏法で硬いマレットで叩いてください。
Q19 クロテイルの代用はグロッケンシュピールで良いですか? |
適切な代用だと思います。ただしグロッケンシュピールはクロテイルよりもさらに1オクターブ高く(実音よりも2オクターブ高く)響きますから、1オクターブ低く読んでください。その場合ヤマハ製の楽器なら低い F♯が出ますが、たいていの楽器では音域外になってしまいます。出ない音のみ1オクターブ上げるか、全面的に1オクターブ上げて(つまり楽譜通りに)演奏することになります。
1本のマレットで叩き、もう一方の手の平で鍵盤を縦に扇ぐようにしてヴィブラートをかけるとクロテイルに近い効果が得られます。
Q20 楽譜に書かれていないマル得情報はありますか? |
「マル得情報」になるかどうかわかりませんが、楽譜に書ききれなかった事柄をいくつか..。
まず基本的に
私がラヴェルの呪縛と闘ったのと同じように、演奏する人もラヴェルの呪縛と闘って欲しいです。アーティキュレーションなど、ついラヴェル版のイメージで演奏してしまう可能性があるからです。そして指揮者は可能な限り真っ白な気持ちでスコアを読み、私の意図をも超えて欲しいです。もちろん CD は参考程度に。テンポの設定について
楽譜のメトロノームの数字は私の解釈によるものであり、あくまで目安ととらえてください。5つある「プロムナード」はそれぞれに適切なテンポを考えるのがポイントです。特に冒頭の「プロムナード」は速めに演奏すると鍵盤打楽器の装飾音が生きないので注意してください。響かせ方について
この曲に限らないのですが、よく私の編曲は「薄い」とお叱りを受けます。吹奏楽は各種の室内楽を包含しているというのが私の考え方です。音色の変化やメリハリのある表現のために意図して薄い部分を多くしているわけですが、いわゆる教育的配慮のある、厚めに書かれた楽譜を演奏することに慣れているバンドには辛いでしょう。でもオーケストラや室内楽の経験がある奏者には逆にオイシイ楽譜に思えるはず。
薄い部分では室内楽をやっているつもりで p でも弱々しくならないしっかりとした発音で演奏してください。メリハリをつけて書いてあるので強弱は放っておいてもある程度は付くはず。p は「弱く」ではなく「柔らかく」とイメージすると良いでしょう。
薄くて怖いという安易な理由で音を加えることは避けてください。ニュアンスについて
全体にアクセントやスタッカートやテヌートなどのニュアンスは少なめです。私には私なりのイメージがあるのですが、演奏者の自由な発想を束縛したくないのでニュアンスは最少にとどめました。そのぶん吹き方の統一を心がけた練習が必要です。もちろん指揮者の解釈でニュアンスやアーティキュレーションを変更することがあっても良いでしょう。コルネットとフリューゲルホルンの用法について
「プロムナード(2)」の 1st トランペットに "Flugelhorn or Cornet (if available)" とありますが、これはできればフリューゲルホルンで、それが用意できなければコルネットに持ち替えて欲しいという意図です。"if available" としているのは、このたった2小節のためにもう1本楽器を用意してもらうのは申し訳ないという私の遠慮です。(笑) 突然楽器を持ち替えて、音程などに不安があり得ることも考慮しました。
他の箇所でも解釈によってフリューゲルホルンやコルネットを使用することもあって良いと思います。たとえば「プロムナード(1)」や「死者とともに・・・」のソロもフリューゲルホルンやコルネットを使う解釈があっても良いでしょう。「死者とともに・・」について
グロッケンシュピールとヴァイブラフォンのリズム(16分音符と6連符)は厳密に合わせる必要はありません。音符の数は目安と考えて、連続的な音に聞こえるように演奏してください。ゆえにマレットの選択は慎重に。特にチェレスタを省略する場合はトレモロに変更しても良いです。
この曲の終わりに "continue" とありますが、これは指揮者がフェルマータを切るまで同じパターンを叩き続けるという意味です。使用する打楽器について
白状すると、実は「侏儒」のトムトムはエマーソン、レイク&パーマーのロック版「展覧会の絵」がヒントになっています。ゆえにコンサート・トムトムではなくドラムセットのトムトムを使っても良いでしょうし、低音はフロアトムを使っても良いでしょう。その場合、チューニングもロック風にするとおもしろいかもしれません。また、ロート・トム(回転させて音高を調節できるトムトム)やマーチング用のトムトムを使うのも効果的かもしれません。
同じく「侏儒」に出てくるフィールドドラムは深胴のスネアドラムを意味しています。チューニングは低めにして重い音色を作ってください。深胴の楽器がなければ通常のスネアドラムでも良いですがチューニングは低めにしてください。チャイムについて
「キエフの大門」の「60」からのチャイム(Percussion 4)は「可能なら2台で」とあります。2台のチャイムを使うのならグロッケンシュピールは省略しても良いです。ここで2台のチャイムを用意できるのなら、ついでに「プロムナード(5)」の冒頭のチャイムも2台にしても良いかもしれません。そのほうが音量的に有利ですから。なるべく堅いハンマーを使わずに、深い音色で豊かな音量が得られるように叩き方を工夫してください。
いずれにしてもここではかなり音のうなりが気になるはず。ここだけヤマハのメロディックチャイムを用意できればベストです。他の打楽器奏者がヒマにしているはずですから、適当な布などを使って叩き終えた音を少し消音すると良いと思います。ペダルで消音しても良いのですが、上手にやらないと消えすぎてしまって難しいです。
そして「キエフの大門」の「60」からのチャイムは2台を舞台の両サイドにセットすると音に広がりが出てとても効果的です。このとき2台のピッチがズレていればなおベター。メロディックチャイムではない通常のチャイムが効果的です。理想的には合計4台のチャイムが必要ということですね(冗談です)。もちろんチューブラーベルではなく、本物の「鐘」を用意できれば申し分なし(もちろん冗談です!)。
なお「キエフの大門」の「60」からのチャイムとグロッケンシュピールは厳密に合わせる必要はありません。チャイコフスキーの「1812年」のエンディングの鐘と同様に、一種の効果音だと考えてください。だからむしろズレていたほうが面白いのです。また「63」以降の "ad lib." は密に(たくさん)叩くよりも粗に(少なく)叩いたほうが教会の鐘らしくなって効果的です。「60」と同様に演奏すれば良いです。音も指定の音(E♭とB♭)にこだわる必要はありません。
"ad lib." としたのはおそらくこのあたりから指揮者がテンポをゆらし始めて合わせにくくなるだろうという理由でそう書いたまでで、それ以外の理由はありません。マレットの選択について
この曲に限ったことではないのですが、鍵盤打楽器を駆使した編曲なのでひとこと。
「f =堅いマレット、p =柔らかいマレット」とは限りません。チャイムのハンマーも同様。あくまで適切な音色を考えてマレットを選択してください。堅いマレットでの p や柔らかいマレットでの f は難しいですが、そこは「腕」ですね。