1. | Cantaloupe Island [ arr. Mats Holmquist ] |
2. | Chameleon [ arr. Mats Holmquist ] |
3. | Dolphin Dance [ arr. Mats Holmquist ] |
4. | Eye Of The Hurricane [ arr. Mats Holmquist ] |
5. | Maiden Voyage [ arr. Mats Holmquist ] |
6. | Stevie R [ arr. Mats Holmquist ] |
7. | Toys [ arr. Mats Holmquist ] |
8. | Watermelon Man [ arr. Mats Holmquist ] |
9. | Jessica [ arr. Mats Holmquist ] |
|
|
マッツ・ホルムキストの名前を知ったのは一昨年のデイブ・リーヴマン・ビッグバンドのショーター作品集のアレンジ担当としてでした。2003年のチック・コリア・トリビュートを聴いてまたまた驚いたわけですが、これも素晴らしい内容なのに恐らくはディストリビュートがヨーロッパ限りで、一昨年のリーブマンのでアメリカに名前が知れ渡ることになったようです。でないと一昨年から立て続けにアメリカのミュージシャンと組んだアルバムなんて出るわけがないですし、今のアメリカのビッグバンドシーンで急速に名前が知れ渡り始めた人なのだと思います。一昨年、フィンランドのエーロ・コイヴィストイネンを招聘準備中にマッツにコンタクトを取って、その流れで去年招聘してこのハンコックの譜面を4曲アルバムが出る前に彼を招聘して日本でお披露目しちゃった、というわけなのです。マッツとは面識がないどころか招聘して成田で初めて会ったわけですが、彼の今までの作品群を聴いてこっちは絶対間違いないと思ってるし、向こうもこっちの対応から信頼してくれたんだと思います。いい経験でした。
さて、私がマッツのアレンジに惹かれたのは、彼のアレンジがマリア・シュナイダー以降で最もとんがってて面白い、と感じたからです。クラシックとジャズの両方で修士号を持っている学究肌の彼がこの10年くらい試行錯誤しているのはビッグバンドとミニマルミュージックの融合なんです。もちろんモダンビッグバンドの書き手であるブルックマイヤーやマクニーリーやホルマンなんかもそうした技法は学んでいると思うのですが、ここまで全面に出してくる人はなかなかいないし、しかもリーブマンのショーター作品集ではそのスタイルがドンピシャだったので、ハンコック作品集も面白いこと必定、って確信してました。しかもディック・オーツと双頭名義のビッグバンドなわけですからもう間違いないって思うでしょう?で、メンバーを見てみると、管楽器のセクションリードとドラムがVJOで管楽器セクションにはスカンジナビアのミュージシャンが一名ずつ参加、あとはNYCのビッグバンドシーンの常連、みたいな顔ぶれです。マッツとしてはVJOとのコラボと位置づけたかったと言ってましたが、これだとちょっと厳しいかも(笑)。
オープニングはCantaloupe island。マッツのアレンジではミニマルの要素もさることながらカノンエフェクト(ざっくり言ってしまうと輪唱みたいなヤツ)もめちゃくちゃ多用するんです。メロディーの断片を使って重層的に仕掛けています。これは好き嫌いが別れそうですが案外ビッグバンドでは使われていなかった手法に思えます。
続いてChameleon。このイントロがいわゆるミニマルな感じです。スティーブ・ライヒのドラミングやクラッピングミュージックに大きくインスパイアされています。で、構成としては5/4と4/4が入れ替わり出てくるんですが、5/4のセクションが慣れるまでもの凄く難しかったです。タイムモジュレーションを変えることで大きさが変幻自在に変わるイメージを与える曲というとマリア・シュナイダーのWyrgryがあるんですが、あれとは違う変幻自在な感じがします。個人的にはギターのポール・メイヤーズの音があんまりハマってない気がします。ウチのバンドでやってたほうが格好良かったと思います。3曲目はドルフィン・ダンス。これは名品。マッツの書くハーモニーのクラスター、本当に美しいです。サックスソロの終わり際にコレクティブインプロビゼーションを織り込んだりと仕掛けの多い譜面です。ディックを想定しているので基本的にサックス隊の譜面は難解です。4曲目はEye of thr Hurricane。これまた激ムズな譜面。ソロのバックで同じ音を色々なパートがパルシブにぶつけるようんsところがあるんだけど、これ、マクニーリーやブルックマイヤーも使う手法だと思うんですが、マッツの書き方だとパルスのパンチが強くてなかなかに面白い効果が出ます。ソロをつないでセクションソリがあってシャウトコーラスからドラムソロ、というオーソドックスな構成。学生バンドが欲しがりそう。
5曲目、オリジナルのStevie R。これはミニマルミュージックの巨匠、スティーブ・ライヒに捧げたもの。構成的には4/4が2小節、3/4が1小節という3小節11拍が一つのユニットになっててメロディの断片から徐々にメロディが出てくる仕掛け。コードは三つだけで7thも書いていないシンプルなコード。いくつか転調があって色彩感が変わります。これはビッグバンドというフォーマットを使ったインプロバイズのパートもあるミニマルミュージックというべきもので、こんなのばっかり並べるとジャズの人に相手にされなくなりそうですが、ライブでやると予想外に盛り上がります。6曲目はMaiden Voyage。これもカノンエフェクトやクラスターを多用したアレンジ。このアルバムではファンク系の曲は相当粉々にするけど、ジャズ系の曲は案外原曲に忠実に書いています。エンディングをフェイドアウトにしないでエコーで処理するアイディアは強力にカッコいいです。流石北欧って感じです。こういうエコーの使い方ってエーロ・コイヴィストイネンのアルバムでも聴いたことがあります。10年前の北欧系クラブジャズのあれこれを思うに、こういう手法も全然ありだと思うのです。マッツはミックスも担当してるので、これも彼のアイディアなのかも。7曲目はJessica。これもテーマは原曲にかなり忠実。バックグラウンドのサウンドにはやはりカノン的な手法が使われますが、我々が子供の頃に遊んだカエルの唄みたいなコード感のあるものではなくかなり密集した響きになります。個人的にはセリエルミュージック(現代音楽の書法で、作曲家が作った音列をスケールとして捉えて書く技法)との親和性も感じたりします。8曲目、Watermelon Man。イントロは例のカノンな感じでどうなることかと思いますがテーマに入るとお馴染みな感じになります。ウォルト・ワイスコフとフランク・バジールがブリブリ行ってくれて楽しいです。中間にリズムセクションの長大なユニゾンソリが出ます。これはリーブマンのところではEl Gauchoでやってましたが、これもマッツのアレンジのトレードマークの一つです。
クロージングはToys。これもテーマは原曲に割と忠実。セクションの掛け合いなんかもあったりしますが、彼のアレンジでは比較的おとなしめかもしれません。
通して聴いてみると、個人的にはめちゃくちゃ面白いんですが、いわゆるミニマル的な技法を使ったイントロとかが続くとあーまたこれかー、みたいに感じる人が出るかもしれないですね。でも、ハンコックにしてもショーターにしても誰にしても、いわゆる1960~70年代のジャズジャイアントの名曲って案外ビッグバンドになってないんです。だからみんな80年代のミンツァーのハンコックをやったりするわけで。ジャケットデザインや中のイラストもまずアメリカの人は使わない素材ですが、ミニマル的な感じはよく出てるでしょう?だからやっぱり軸足的にはヨーロッパのジャズだなぁって感じがします。個人的にはマッツのサウンドからはライヒだけではなくブーレーズやシュトックハウゼンみたいなヨーロッパの現代音楽との親和性を強く感じました。今回随分クラシックを引き合いに出していますが、今はyoutubeに色々あるので、ライヒ周辺も是非聴き較べてみて下さい。ヨーロッパの人はジャズを「西洋音楽の一形態」として捉えていると思えますし、ライヒのミニマルは実はアフリカの民族音楽からアイディアを得ているのです。ジャズとリンクできることに何の不思議もないんです。個人的にはそういう色々なことに気を付かせてくれるアルバムでもありました。面白いですよ。
(2016年2月 辰巳哲也)
|
|
| ||||||
|
|
| ||||||
|
|
| ||||||
|
|
| ||||||
|
|
|
クレジットカード(推奨) |
ご利用いただけるのは、以下のカードです |
後払い(コンビニ・銀行・郵便局) |
■このお支払方法の詳細
■ご注意
|
代金引換 |
ご利用いただけるのは2回目以降のご注文からとさせていただいております。
■このお支払方法の詳細
■ご利用可能なお支払い方法
|
銀行振込(前払) |
|
商品代金(本体・税別) | 発送方法が |
発送方法が |
支払い方法が 「代金引換(コレクト便)」 の場合 |
|
時間指定:可能な場合あり | 時間指定:可能 | 時間指定:可能 | ||
送付手数料 | 0円 | 550円 |
880円 |
1210円 |
1円〜3,000円 |
|
|||
3,001〜5,000円 |
無料 |
|||
5,001円〜10,000円 | 550円
|
|||
10,001〜15,000円 | 無料 |
550円 |
||
15,001円以上 |
|
発送にかかる日数の目安
発送方法 | 北海道、東北、中国、四国、九州、沖縄 | それ以外 |
ヤマト運輸の宅急便・コレクト便 レターパックプラス/ライト(郵便小包) |
2日 | 翌日 |
ヤマト運輸のネコポス便 |
|
クレジットカードでお支払いの場合についての追記
代金引換によるお支払いに関して
※平成26年4月1日より一部変更の上適用
お客様のご都合によるキャンセル
お客様のご都合によるキャンセルで、すでにご入金をいただいている場合の返金
3万円未満の返金 | 220円 |
---|---|
3万円以上の返金 | 440円 |
ミュージックストア・ジェイ・ピーの都合によるキャンセル
前払いで未入金のお客様へ
商品発送後の返品に関する規定
楽譜の場合
CDの場合
マスクや雑貨の場合
ミュージックストア・ジェイ・ピーのミスで違う楽譜や雑貨、破損CDなどをお届けしてしまった場合は、もちろん返品に応じます。