フランスの新しい世代を代表する作曲家の一人、マクシム・オーリオの作品集です。
オーリオは1980年にフランス北部のシャルトルで生まれ、初めはオルガンを、すぐにハープシコードと打楽器を学び始めました。後にトゥールーズ国立地方音楽院でホルンも学んでいます。独学で作曲を習得した後、ベルギーのレメンス音楽院でヴァンデルローストに師事し、2006年に作曲と管弦楽指揮法で修士号を取得しました。2008年にはフランス軍楽隊長選任試験をパスし、ヴェルサイユに本拠地を置くフランス陸軍中央音楽隊の副指揮者に就任しました。
作曲家としては、2000年に最初の出版作品となる吹奏楽のための組曲「ガリヴァー旅行記」を発表し、その後も吹奏楽曲や独奏曲、室内楽曲、映画音楽などを書いています。
このCDには、1929年3月31日にパリ警視庁内の組織として正式に創立されたフランスの名門吹奏楽団、パリ警視庁音楽隊の演奏、2007年9月からこのバンドの副指揮者を務めるパスカル・ジャンドローの指揮で、オーリオの吹奏楽作品8曲が収録されています。
アルバムのタイトルになっている「エアロスペース」作品10は、ミディ=ピレネー地域圏音楽協会の委嘱を受けてミディ=ピレネー地域圏吹奏楽団のために作曲され、2005年8月19日にラランヌ=トリで、翌20日にキャプヴェルンで、それぞれジェラール・メソニエの指揮により初演されました。宇宙に魅了されていた作曲者は、ミディ=ピレネー地域圏の首府トゥールーズがフランスの航空宇宙産業の中心地であることから、2004年から2009年にかけて作曲された吹奏楽と合唱のための大作「宇宙の交響曲」作品20への前奏曲と位置付けてこの曲を作曲しました。大宇宙に思いを馳せて書かれたスケールの大きな作品で、曲中でアポロ11号のニール・アームストロング船長が月着陸船イーグルで発した月着陸時の「ヒューストン、こちら静かの基地。イーグルは着陸した。」と月面に降り立ったときの有名な「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。」の音声の録音が流されます。
科学の粋である宇宙飛行とは打って変わって、オーリオは神話や伝説、あるいは小説を題材にした作品にも非凡な才能を発揮しています。
古代ギリシャの詩人ホメロスの作とされる有名な英雄叙事詩「オデュッセイア」は、ギリシャ神話の英雄でイタケーの王オデュッセウスがトロイア戦争での勝利により神々の怒りに触れ、故郷に戻るまでの苦難の旅を描いています。元々は韻文詩として吟遊詩人が歌っていましたが、後の時代に24巻からなる叙事詩に編集されました。海の神ポセイドンの怒りに触れて難破し、スケリア島の海岸に漂着したところを助けられたオデュッセウスが、パイアーケスの王アルキノオスの下に案内され、そこでそれまでの冒険を語るのが第9巻から12巻で、オーリオはこの叙事詩の中でも特に不思議な生き物が次々に登場するオデュッセウスの冒険の物語をテーマに、2005年にフランスのエイバン吹奏楽団の委嘱で「オデュッセイア」を作曲しました。蓮を食べるロートパゴイ族、一つ目の巨人キュクロプスとの戦い、食人族ライストリュゴン、魔女キルケーの島、冥界、セイレーンの島、太陽神ヘリオスの怒り、船の破壊と海の女神カリュプソの島への漂着という場面が、目の前に浮かぶようです。
太陽神ヘリオスの息子パエトンは、友達に嘲られ、自分が太陽神の息子であることを証明しようと、ヘリオスの下を訪れました。初めて息子と会ったヘリオスは確かに自分が父親であると告げ、パエトンの願いをかなえると言うと、パエトンは友達を見返すため天空を駆ける太陽を曳く馬車を1日操縦させて欲しいと頼みました。ヘリオスですら気の荒い馬たちを操るのが難しく最初は拒んだのですが、約束を破ることはできずその願いを聞き入れました。パエトンは馬車に乗って天空に駆け上がったものの、やがて軌道をはずれてめちゃくちゃに走り出し、大地を焦がし、川を干上がらせ、草木を焼き払いました。大神ゼウスは仕方なく雷電を放ってパエトンを撃ち落としました。太陽が地上に近づき過ぎたため、アフリカの人は肌の色が黒くなり、砂漠が増えてナイル川も砂漠の中を流れるようになったとされています。
このパエトンの物語は同じフランスの作曲家としてはジャン=バティスト・リュリやカミール・サン=サーンスも題材に取り上げましたが、オーリオはバストロンボーンの協奏曲として「パエトン」作品22を作曲しました。
バストロンボーン独奏とフルート、イングリッシュホルン、E♭クラリネット、ホルン、ピアノ、ハープ、コントラバス、打楽器のアンサンブルという編成で、リヨン国立高等音楽院でバストロンボーンを教えるフレデリク・ポティエの委嘱により、友人のヴァランタン・ペレの卒業試験での演奏のために作曲されました。力強さだけでなく繊細さも兼ね備えたバストロンボーンのテクニックを堪能できます。
呪いがかけられた笛を知らずに拾った半人半獣のマルシュアースは、その笛を吹くうちに音楽の神アポロンに勝るという評判を得るようになりましたが、その噂を聞いたアポロンの怒りを買い音楽合戦を挑まれてしまいます。マルシュアースは勝った者は負けた者に何をしてもいいという勝負を受けたのですが、竪琴を弾くアポロンに敗れ、木に縛りつけられ生きたまま皮を剥がれてしまいました。フランス・ミディ=ピレネー地域圏のアリエージュ器楽アンサンブルの委嘱で2005年に作曲された「マルシュアース」作品11は、このマルシュアースの物語をテーマにフルート独奏、オブリガート・ハープと吹奏楽のための協奏組曲として書かれています。マルシュアースとアポロンの音楽合戦さながらに、さまざまな特殊奏法を用いたフルートとハープの独奏が絡み合い、美しく神秘的な音楽が流れてきます。
「三銃士」はドイツの楽器メーカー、ミラフォンの委嘱により、この録音と同じミラフォン・テューバ・アンサンブルとパリ警視庁吹奏楽団のために2003年に作曲され、その年の6月28日にフランス・アルザスのゲブヴィレールで開催された国際テューバ・ユーフォニアム・コンクールのコンサートで初演されました。アレクサンドル・デュマ父の有名な小説「三銃士」をテーマに、主人公ダルタニャンと2人の女性、コンスタンス・ボナシューとミレディーという登場人物に焦点を当て、その人物のキャラクターを音楽で描いた3つの楽章からなるテューバ四重奏と吹奏楽のための協奏曲として書かれています。縦横無尽に駆け回るテューバが聞きものです。
アンデルセン童話の「年取ったカシワの木の最後の夢」は、何百年も生きるカシワの木とわずか1日の命のかげろうの対話から、命の価値を考えさせられる物語です。その物語をテーマにした「年取ったカシワの木の最後の夢」作品9は、フランス南東部イゼール県のヴィネーの街の委嘱を受けて、新しいクルミ博物館の落成を記念して2004年に作曲されました。
ヴァンデルロースト譲りのスマートな作風にさまざまなアイデアと適度に取り込まれたコンテンポラリーな手法、フランスの伝統的な大編成吹奏楽による豊かな響きから室内楽的な透明感まで、聞き所に事欠かないオーリオの作品からはこれからも目が離せません。
収録曲の楽譜はデ・ハスケから出版されているか出版予定となっており、いずれもお取り寄せできます。
(2010年3月)
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