1. | A Train [ Billy Strayhorn / arr. Bob Florence ] ( 9:05 ) |
2. | I'm All Smiles [ Michael Leonard / arr. Bob Florence ] ( 6:49 ) |
3. | Suicide is Painless [ Johnny Mandel / arr. Bob Florence ] ( 7:58 ) |
4. | Fluffy [ Bob Florence ] ( 15:07 ) |
5. | Geezerhood [ Bob Florence ] ( 5:45 ) |
6. | Limited Edition Express [ Bob Florence ] ( 8:28 ) |
7. | Luci [ Bob Florence ] ( 7:32 ) |
8. | You Must Believe In Spring [ Michael Legrand ] ( 7:50 ) |
9. | Auld Lang Syne [ arr. BOB FLORENCE ] ( 2:27 ) solo piano: Bob Florence |
昨年惜しくも亡くなってしまったボブ.フローレンス。彼のビッグバンド名義の最後の作品がリリースされました。前作でゲスト扱いだったピーター.アースキンとスコット.ウィットフィールドがレギュラーになり、カール.サーンダースがリードを吹くという布陣になっています。ボブの代わりにピアノの座につくのはベテランのアラン.ブロードベントという、ボブを追悼するに相応しい豪華な陣容になっています。
オープニングはエリントンのA Train。どアタマの完璧なピッチのE♭のユニゾン打込み一発が既に強力。アップテンポだけど曲の尺を倍にするというボブお得意の手法がのっけから炸裂してます。代役のアラン.ブロードベント、ボブよりも内声のコンプの仕方がエヴァンスっぽいのはそれはそれで悪くないんだけど、タッチというか楽器の鳴らし方がどうしてもボブと比べると見劣りしちゃう。ボブがピアノの譜面に書いてる高音部や低音部でのシンプルなシングルノート、もっと高音の倍音がピーンと通った音で弾いて欲しいなぁ、っていう気分になっちゃう。それほどボブのピアノのタッチは素晴らしかったんですよ。エリントンともベイシーとも違う、でもビッグバンドの中で自分の音をしっかり主張できる譜面を書く人でしたから。プロですらこういうところで差が出るんですが、もし社会人や学生バンドでボブの譜面を演奏するのであれば、「弾くんじゃなくて鳴らす」ピアノの大事さっていうのを考えて欲しいなぁ、と。
2曲目はI'm all smiles。アルトのキム.リッチモンドのショーケース。この人自身が素晴らしいアレンジャーだし、自分のビッグバンドも持ってるわけだけど、このクラスのプレイヤーが大勢脇を固めているってのが凄いですよねぇ。
3曲目はジョニー.マンデルの曲。副題のM*A*S*Hのテーマの方が有名かもしれないですね。これは豪腕トロンボーンのボブ.マクチェスニーのソロがフィーチャーされます。ウエストのトロンボーンっていうと真っ先にアンディ.マーチンの名前を上げる人が多いけど、バカテクぶりではこの人も全然負けてないと思います。ボブのアレンジって特定のリズムパターンを色々手を替え品を替え重層的に重ねるのですが、この曲のテーマ自体がそういう感じなので非常にしっくり来る感じ。エヴァンスのピアノのヴァージョンしか知らない人には新鮮でしょうね。
4曲目はオリジナルのFluffy。イントロのリズム隊の出方がミニマルみたい。ボブに限らずこの世代のLAのアレンジャーっていうのはいわゆるクラシカルな現代音楽の手法も熟知してるんですよね。ボブはミニマルみたいなの好きだったのかもしれないですよね。大体ジャズのドラム自体ミニマルな要素を一杯持ってるような気がしますし。実はボブ.フローレンスやビル.ホルマンのアレンジの手法ってのはクラシカルな人にも拒否反応の出にくいもの、というか、フォーマットがビッグバンドなだけで現代音楽との親和性が良いですよね。ブラスバンドの人達とかが聴くと結構ハマりそうな気がするんですよ。ソリストは50年代はHi-Lo'sなんてコーラスグループでも歌ってた、おそらくはこのメンバーの中ではボブのバンドで最も古株のDon Shelton。トロンボーンはAlex Iles, ラッパのスティーブン.ハフステッター、タイコのアースキン。ボブのアレンジは晩年に行くに従ってどんどん巨大化していったように思うのですが、これも15分を超える長い尺な演奏です。それを感じさせない素晴らしい色彩感のある譜面です。筋金入りのビッグバンドファンの人で『ボブ.フローレンスの譜面は今ひとつスイング感が....』っていう人も居るんですけど、多分自分らしい譜面を書いてるとスイングするかどうか、というのが判断の座標軸でなくなることもままあるのではないかと。しかしエンディングのこの和声凄いなぁ。
5曲目はGeezerhood。ボブのバンドはサックス6人、ラッパ5人ですが、この番手の並びは左右対称なんですよ。だからバリサクが両脇にいるわけです。イントロのサックスの仕掛けではこの番手の並びによる位相の面白さが満喫できます。この曲、ひねくれてますがブルースです。トロンボーンのスコット.ウィットフィールドがフィーチャーされてプランジャーミューとで暴れます。ブルースですが、リハモが凄くてなかなか普通のブルースに聴こえません。
6曲目はLimited Edition Express。ボブのアレンジの技法はいわゆるリニアアレンジメント的な色が強いわけだけど、案外組み立て方に共通点があって、たとえばcarmelo's by the freewayみたいなラインの組み立てがそうなんですが、この曲でもそういうのがよく見えます。ていうかこの曲はcarmeloを土台にした全く別の曲。ソリストはキム.リッチモンドとロン.スタウト。ロンのフレージングっていうかアウトの仕方、独特で良いですよね。
7曲目はLuci。ソロはカール.サーンダース。カールはビル.ホルマンのリードトランペットをもう30年近くつとめてるいます。良くビッグバンドのサウンドはタイコとリードラッパで決まる、みたいに良く言われますが、ボブのアルバムを聴いていると、それは違うように感じられます。カールはボブのバンドの5番ラッパに誘われた時にも、そして最近リードを頼まれた時もとても恐縮したそうです。そしてIt's very hard to adjust him being gone.と書いています。リードラッパってのは自分の吹きたいように吹いていいものではないんですよ。カールをしてボブの音楽に合わせるのはとても大変だったと。そしてこのラッパセクションはまぎれもなくボブ.フローレンスのトランペットセクションの音になってる。エリントンは自分の楽器がオーケストラだと言った。でもそこにはいつもキャットやラビットと言うような固定したメンバーが居た訳です。ボブのバンドは時代とともに微妙にメンバーが変わってるけど、どのアルバムを聴いてもボブの音がするでしょう。これは凄いことなんじゃないかな。このあたりはとても考えさせられます。
8曲目、You Must Believe in Spring。これ、演奏したことあるんだけど本当にいい譜面。でも私がやったのや彼がドイツのSWRで録音したのと少し違う所があるなぁ。ルグランの書く曲も、シンプルなモチーフを色々に展開するものが多くて、ボブのアレンジの作風によく似合うんですよね。
9曲目、Auld Lung Syne。蛍の光を持ってきますか。しかもこれ、生前のどこかのトラックをミックスして作ったものですね。それにホーンを一部かぶせたのではないかと。ボブのピアノがGordon JenkinsのGoodbye(ベニー.グッドマンのビッグバンドのエンディングテーマだった)のイントロの有名なフレーズを引用して弾いてるのがまた何とも言えないです。個人的にはこのヴァーチャルなトラックが一番印象的でした。
極めて個人的な見解ですが、ボブの世代のLAの音楽家の作る音楽には、アートの分野でのミッドセンチュリーモダンデザイン的なものと見事にリンクしていたと思います。ボブの同じようなシンプルな素材を拡大したり縮小したりして加工していくようなボブの音楽の作り方に、私はバックミンスター.フラーの作品と同質な感覚を覚えます(http://www.bfi.org/)。時代とともにスタイルが変わりゆくのは仕方ないことです。このアルバムのジャケットの背後にぼんやりと写るビッグバンドの巨人とボブの写真を見ていると、このジャケットがボブの遺影に見えて、「ボブもあっちの世界の人になっちゃったなぁ」という印象を強く持ってしまいます。ボブにしてもメイナードにしても、遺作のリリースに関わった人達を見ているとみんな家族のようですよね。きっと音楽家として幸せだったボブの最後の作品として大事に聴こうと思います。
(2009年7月 辰巳哲也)
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