1. | ハンガリアン・メロディーズ ( Hungarian Melodies ) [ ヴィンセント・バック ( Vincent Bach ) ] ( 5:23 ) |
2. | Carnival Variations [ Don Jacoby ] ( 1:59 ) |
3. | Trumpeter's Prayer [ Tutti Camarata ] ( 5:07 ) |
4. | Josephine [ Bomhr Kyrl ] ( 5:29 ) |
5. | Dramatic Essay [ クリフトン・ウィリアムズ ( Clifton Williams ) ] ( 4:56 ) |
6. | The Man with the Horn [ DeLange, Jenny and Lake / arr. Sammy Nestico ] ( 3:19 ) |
7. | Vaxuosity [ Philip Field ] ( 6:41 ) |
8. | ダイナミカ ( Dynamica ) [ ヤン・ファンデルロースト ( Jan Van der Roost ) ] ( 6:30 ) |
9. | Cornucopia [ Jack Hayes ] ( 6:34 ) |
10. | Double Concerto Allegro [ アントニオ・ヴィヴァルディ ( Antonio Vivaldi ) / arr. アンドリュー・グローバー ( Andrew Glover ) ] ( 3:19 ) |
11. | Trumpeter's Lullaby [ ルロイ・アンダーソン ( Leroy Anderson ) ] ( 3:33 ) |
12. | Brazilliance [ Warren Baker ] ( 3:42 ) |
13. | Yankee Doodle [ JB Arban / arr. アンドリュー・グローバー ( Andrew Glover ) ] ( 4:45 ) |
14. | Danny Boy [ Traditional ] ( 2:09 ) |
私はジャズ畑の人間なので、このバンドのことは全く知らなかったのですが、Ohloneはカリフォルニア州、オークランドの南東40マイル位のところにあります。Ohlone Wind Orchestra(以下OWO)は、このOhlone Collegeの音楽学部の学生で構成されているバンドのようです。
さてさて、日本ではブラスバンドがポップス系の音楽をやる、というと、若干格下目線で見るような傾向があるように思います。ミュージックエイトからニューサウンズ.イン.ブラスに至るまで、日本でも吹奏楽におけるポップス系の譜面は沢山ありますが、高校時代の個人的な吹奏楽部の経験ではどれも多少軽めに見られている観が個人的にはあります。このアルバムはジャズビッグバンドの名門であるスタン.ケントンのバンドでリードトランペット奏者として名声を博し、教育者としても、バンドリーダーとしても積極的に活躍しているマイク.ヴァックスがOWOのゲストソリストとして参加したアルバムです。吹奏楽一本槍の方には少し違和感のある組み合わせかもしれませんが、佼成ウィンドやシエナにエリック宮城さんがゲストで乗る、っていうイメージだと分かりやすいかもしれません。
ライナーの冒頭に「我々は経験の集積体なのです」とあります。どんな音楽のスタイルを活躍するフィールドの主体に置くかに関係なく、我々は過去の偉大な演奏家や教則本などを追体験して今があるわけです。このレコードではそうした過去の名手にちなんだ”Trumpet Music”が展開されています。ジャンルの違いどうこうは置いておいて、まずは音楽を楽しんでみましょう。
オープニングは今やラッパの名器の代名詞とも言えるVincent Bachのハンガリアン.メロディーズ。ラッパを作るクラフトマンは大抵名プレイヤーだったりしますが、バックもそうだったんですね。マイクのプレイはクラシカルな人の演奏スタイルに比べると若干ラフな感じがしないでもないですが、楽器が豪快に鳴ってて爽快です。エンディングカデンツァでのハイFは彼には楽勝の音域でしょう。
2曲目はお馴染みヴェニスのカーニヴァルの変奏曲です。これはドン.ジャコビーの手になるものですが、マイクが高校生の時にドンとマイクと、今ハリー.ジェイムス楽団のリーダーをしているフレッド.ラドキと三人で吹いた事があるそうです。これはマイクのオーヴァーダブだそうです。音楽はマーチングバンドのようでもあり、ジャズな感じの和声も随所に感じられます。考えてみればスーザの時代はマーチ全盛でしたし、じゃズだってニューオルリンズのスタイルはマーチングから来たものです。ガーシュインのいた頃のポール.ホワイトマンのバンドであるとか、当時の映画音楽はこういう感じの音楽が多かったように思います。今みたいなジャンルの住み分けみたいなのとは関係ないような気がします。
3曲目、来ましたTrumpet Prayer。これのオリジナルを吹いたコンラッド.ガッゾはスイングビッグバンドのトランペットの音色のあり方を決定づけたような人で、1950~60年代のハリウッドでの映画やテレビでのリードラッパとして沢山の実績を残した名手でした。本人の演奏も大変に美しいもので、多くのトランペット奏者の憧憬を集めたものです。昔はネットの上でガッゾの音が聞けたのですが、今見つけられないのは残念。マイクがこれを選ぶのは実に納得です。彼自身ガッゾを生で聞いていたことは間違いないし、敬愛していた事は間違いないからです。
4曲目は伝説の名手、ボウミール.クリルの曲です。クリルはハーバート.クラークなどのコルネットの名手が大勢いた時代のトッププレイヤーの一人だったそうです。クリルはボヘミアからアメリカに渡ってきたそうなのですが、アメリカはヨーロッパやアフリカから多くの移民が移り住んで今のような人口構成になった訳ですが、二十世紀初期に書かれた曲にはヨーロッパの音楽の色合いが濃く残っているように思えます。
5曲目は2曲目で紹介したドン.ジャコビーの為に書かれた曲だそうです。ドンはベニー.グッドマンなどのスイングビッグバンドや放送局のスタジオミュージシャンとして活躍した人のようで、教育者としても名前を残した人のようです。wikiを見てみるとスーザのバンドでクラークのパートを吹いた人でもあるようで、その実力の素晴らしさが想像できます。難しい曲ですがバッチリ吹いてますねぇ。だって、アメリカでラッパ吹いてる人にとってはジャンルに関係なくクラークは必須なイメージありますもん。
6曲目のThe Man with The Hornはレイ.アンソニーとハリー.ジェイムスの録音が有名なようです。二人とも、特にハリー.ジェイムスはそのルックスと驚異的な技巧でアメリカでは全米的なスターでした。この人はスイングジャズのスターでしたが、技巧的にはクラークに代表される超絶技巧をマスターしていた人だったと思います。アレンジはジャズビッグバンドアレンジの巨匠、サミー.ネスティコが書いていますね。
7曲目はアメリカ海軍バンドのリーダーを務めたフィリップ.フィールドという人がマイクの為に書いたオリジナルだそうです。アメリカでは陸海空それぞれの軍がウィンドアンサンブルやビッグバンドを持っていますから、、恐らくはマイクが徴兵かなにかで軍隊にいた頃に書かれたものでしょう。カデンツァ、なかなかに難しいのですが、譜面なのかマイクのアドリブになっているのかは不明です。譜面かな。
8曲目はベルギーのJan Van Der RoostのDynamica。これはマイク抜きでの演奏のようです。OWOは現地では実力のあるバンドのようですが、確かに上手いんだけど、特に木管セクションのピッチに微妙なブレがあったりして、精密さにかけては日本の学生の吹奏楽団も負けてないように感じられます。
9曲目はアメリカの長寿番組、Tonight Showのバンドリーダーを長く務めた名人にして先日惜しくも80で引退(!)したドク.セヴァリンセンの為に書かれた曲です。ファーガソンなどのスタープレイヤーとは違いますが、ドクもまた素晴らしい名手です。マイクは「ドクだったら我々を含む他のプレイヤーよりやすやすと吹いちゃうんだろうなぁ」って書いてますが、ドクはそれほどのめいしゅであり、このレベルになるともう恩学のジャンルの違いなんか関係ない訳です。日本ではクラシカルなスタンスにいる演奏家とジャズやスタジオの人を別の人種のように考える傾向が未だに残っていますが、そんなのは実はナンセンスなんです。
10曲目はヴィヴァルディの2本のトランペットの為のコンチェルトをブラスバンドににアダプトしたもの。これは2曲目でちょっと名前を出した彼の旧友であるフレッド.ラドキとの共演です。初めて会ってから48年経って一緒にこうして吹けるっていうのは羨ましいですね。
11曲目はアンダーソンの有名な「トランペットの子守唄」ですね。アンダーソンやガーシュインは往々にして「ライト.クラシック」なんていう括りをされますが、二十世紀前半のアメリカの恩学の状況って、例えばマーチングであるとか、ジャズであるとかそうしたものがごった煮のようになっていて、演奏する側には大きな隔たりはなかったのではないかと思えてなりません。20世紀前〜中期のアメリカ音楽には、難解、抽象的になっていくヨーロッパのクラシカルなシーンとは違う良さがあって個人的には好きです。
12曲目は80年代にマイクの為にWarren Bakerによって書かれたオリジナル。ラテン調の曲なので、もっとパーカッションにはイケイケなラテンで行って欲しいのですが、そうならないのがブラスバンドらしいところ。この辺りは日本のバンドとも似てる感じがしますが、メンバーがいわゆるオーセンティックなラテンのパターンを知らないのか、それとも譜面がこうなっているのかはよく分かりません。
13曲目、来ましたアーバン。Yankee Doodleです。途中でマイナーに変わるというお遊びが付いてます。本人も楽しんで吹いているようです。
最後の曲はアメリカ民謡のDanny Boyを持ってきました。ソロでストレートにメロディを謳いあげています。これは彼の師匠でもあったDon Jacobyがクリニックなどでのアンコールで必ずやっていたそうで、マイクはそれを踏襲したようです。
このアルバムはマイクが先人に捧げたオマージュのような作品です。アメリカのプロの人っていうのはクラシカルだろうがスタジオだろうがジャズだろうが、クラークやアーバンのようなエチュードをきちんとやってるものです。多分マイクはジャズとかクラシカルとかに関係なく「ラッパのある音楽」が好きなんですよ。そして上手い人にはジャンルなんて関係ないわけです。
途中でも書きましたが、アメリカの音楽のルーツを考えてみれば、スーザの時代にはマーチがありましたし、ニューオルリンズのジャズの母体はマーチングにありました。案外ルーツは近いところにあるんです。そして今のウィンドアンサンブルの追いかけている現代的なサウンドと、モダンジャズオーケストラの追いかけている音楽は、フォーマットの違いこそあれ、実は案外近い所にあります。ドラムのあるなしのような楽器の構成の違いやグルーブの有る無しを除けば、今のモダンなウィンドアンサンブルとジャズオーケストラのやっている音楽というのは和声などでは結構共通項があるものなのです。だから、管楽器で音楽をやるっていう立ち位置で考えると、ジャンルで壁を作ることっていうのは実に勿体ない事だと思います。この作品をきっかけにして、マイクが参加しているジャズのアルバムも聞いて頂けたらなぁ、とも思います。私は年に一回くらいしか吹奏楽というフォーマットでは吹かないのですが、これを聴いたら久しぶりに吹きたくなってきました。
(2008年12月 辰巳哲也)
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