1. | Infant Eyes [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 6:40 ) |
2. | Speak No Evil [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 10:56 ) |
3. | Yes or No [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 10:07 ) |
4. | Nefertiti [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 9:27 ) |
5. | El Gaucho [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 9:26 ) |
6. | Iris [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 11:55 ) |
7. | Black Nile [ Wayne Shorter / arr. Mats Holmquist ] ( 8:10 ) |
デイブ・リーブマンがビッグバンドをいつから始めたのか、ちょっと記憶にないのですが、2001年にNYCで見たことがあるので、かれこれ14年は続いていることになります。NYCではほんの少ししか見られなかったのですが、ジム・マクニーリーなんかのいわゆる難解で重厚なアレンジャーの譜面が多い印象があります。個人的には友人でもあるトロンボーンのスコット・リーヴスが参加していることで身近なイメージのあるバンドです。で、このバンドの新作、なんとショータートリビュートである。ショーターとリーブマンといえば90年代のライブ・アンダー・ザ・スカイでのバトルが印象深い。私の周りではショーターよりリーブマンの方が評価が高かったような記憶があります。そんなリーブマンのショータートリビュートとなれば聴く前から期待が高まりました。アレンジャーはマッツ・ホルムキスト。調べてみるとデンマークのアレンジャーのようです。日本では全く聴いたことのない名前ですが、リーブマンは北欧のミュージシャンとも共演が多いので今回の抜擢となったのでしょう。ライナーによると2010年から交流が始まったようです。
収録曲はショーターの有名曲ばかりです。オープニングはInfant Eyes。マッツは自分の音楽に対するライヒやアダムスなどのミニマリスティックなコンポーザーの名前を上げていますが、それはこのトラックからも十分見て取れます。ブルックマイヤーからシュナイダーに繋がる現在のモダンビッグバンドアレンジメントとは少し違う流れから来ているような印象を受けます。2曲目はSpeak No Evil。テーマのモチーフを軸にしたバックリフが随所に出て来ます。コールアンドレスポンスというよりは伝言ゲームみたいな感じがします。3曲目はYes or No。最初の2曲が比較的重い感じの曲なのでぱっと明るくなった印象が来ます。アンサンブルのヴォイシングもいかにもアメリカで勉強して来ました!みたいな感じとは少し違って、それがいい感じにオリジナリティになっている気がします。4曲目、Nefertiti。本家マイルスを思いっきり踏襲してる(笑)。さっき書いた通り、この人はミニマルなコンポーザー大好きなわけですが、ならばマイルスのテイクはミニマル好きには相当たまらないテイクなはずなのです。だってある意味ミニマルだもん、マイルスのトラック。多分本人はオリジナルを意識しつつ相当計算して譜面を書いてるはず。この譜面、見てみたいです(笑)。5曲目、El Gaucho。他の曲でもそうなんだけど、テーマのモチーフが出るとそれに呼応して連続して類似/変質した音形が続くっていう手法に少しシュトックハウゼンが見えるような気がします。その感覚が正しいかどうかは分からないけど、この人、いわゆる20世紀中期から後期の現代音楽の手法にも造詣が深い感じがするのでそういう印象を持っちゃうのかもしれません。現代音楽の技法に造詣が深いのはビル・ホルマンなんかもそうなんですけどね。6曲目はIris。これ見落としてました。マイルスのESPに入ってるヤツですね。ショーターのスローな曲は好きなものが多いので個人的に凄く嬉しいトラック。で、最後にBlack Nileが来ました。選曲的に比較的モヤモヤした感じのものが多かったので、最後にこういう分かりやすいヤツを置くっていうのは良いのかも。でも最後をありがちな感じに終わってくれない(笑)
これ、いいアルバムです。ショーターの作品だけでビッグバンドのアルバム作るっていうのも素敵なんですが、アレンジがユニークで面白い。しかもアメリカのバンドみたいにやたらとハイノートを書いて来たり過剰に難しいことを書いてない。その楽器で無理のない音域(特にトランペット!)で書かれていて、却ってそれでショーターの音楽にある内省的な感じが上手く出ていると思います。ソリストもリーブマンの認めたミュージシャンばかりでありどれも素晴らしいものです。譜面は個人的には時々コードに対して??って思う瞬間もないわけではないですが、そもそもショーターの音楽の自由度というのは本人の直近の演奏などを見ててももの凄く大きいのでこれもまたありだろうと納得してしまいます。例えとして正しいか分かりませんが、大技ばかり連発する最近のアメリカのプロレスと、そういう派手さはないけど見応えのある総合格闘技の違いみたいな感じ。もちろんこのアルバムは後者。
(2014年10月 辰巳哲也)
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