1. | Modus Operandy [ Michael Breacker / arr. Kevin Swaim ] ( 9:09 ) |
2. | Duplicity [ Colin Campbell ] ( 9:32 ) |
3. | Perseverance [ Richard DeRosa ] ( 7:35 ) |
4. | Hip Pickles [ Lou Marini ] ( 8:20 ) |
5. | Nail in the Coffin [ Kevin Swaim ] ( 7:40 ) |
6. | Doublethink [ Sean Nelson ] ( 5:16 ) |
7. | Yesterdays [ Jerome Kern and Otto Harbach / arr. Bill Holman ] ( 6:53 ) |
8. | Special Interests [ Neil Slater ] ( 5:09 ) |
9. | The Last Theme Song [ Steve Wiest ] ( 7:07 ) |
大学一年生の時に先輩から、これ格好いいから聞いてみな、とCDを貸していただいたのがワンオクロックラブバンドとの出会いでした。衝撃の演奏に身震いし、ワンオクロックの録音を買いあさったものでした。あれから約15年。ワンオクロックラブバンドのOBとして、こうしてLAB2011のライナーノーツを書いているなんて未だに実感がわきませんが、センチメントになり過ぎないようにいきたいと思います。
1曲目は学生コンポーザーKevin SwaimのアレンジによるMichael Breckerの“Modus Operandy”。この複雑難解な曲のトランスクライブとモダン感覚溢れるアレンジにいきなり度肝を抜かれますが、なんといってもテナーサックスのMark Dehertoghの、Brecker的ボキャブラリーを自分のものにしているその演奏能力の高さに脱帽です。Nick Wlodarczyk のトロンボーンソロも聴きごたえ十分で、ソロ中のバックとの絡みは迫力満点です。それにしても複雑に入り組んだこの変拍子のアレンジをバンド全体で一糸乱れずに演奏する技術の高さはお見事としかいいようがありません。ここまでくるとちょっと見せつけっぽいですね(笑)。
2曲目はバンドのピアニストであるColin Cambellによる初のビッグバンド用アレンジである“Duplicity”。“Duplicity”とは“2面性”つまり裏表がある事を意味するわけですが、そのタイトルの通り、美しい無伴奏のオーケストラ・スタイルのイントロから始まる曲がトランペットソロを挟み、ある種凶悪な雰囲気の中盤へ進み、最後はまたその美しい雰囲気に戻りその対称性を鮮やかに描きます。そして表裏の危険性を暗示するかのようなミステリアスなラスト。学生にありがちなやや詰め込み過ぎなアレンジのきらいはありますが、初のビッグバンドチャートとは思えない完成度の高さにノーステキサス大学の学生の底力を感じざるをえません。ソロはトランペットのPete Clagettoと作曲者であるピアノのColin Cambellで曲全体の雰囲気をつかんだ素晴らしい表現力です。
3曲目はノーステキサス大学のジャズ・コンポジションの教授であるRichard Derosaによって書かれた“Perseverance”。このアレンジは全体的にホーンセクションがタイムキーパーの役割を果たすことにより、リズムセクセクションが装飾役を務める、という逆転発想の図式の曲です。そのテーマは最後まで変わらず螺旋状のような雰囲気で、いかにもLab(実験室)的な要素を含んだ曲といえるでしょう。ベースのJacob SmithとピアノのColin Cambellの素晴らしいリズムセクションのソロからフリューゲルのPete ClagettとテナーサックスMark Dehertoghの幻想的なソロへ続きます。曲を通じRichard Derosaは霊妙な雰囲気を創出しており、モダンビッグバンドの傑作とも呼べる作品となっています。
そしてBlue Lous Mariniの“Hip Pickles”が続きます。この曲は元々1960年代後半にワンオクロックのために書かれた曲で、Lous Marini属するBlood, Sweat & Tearsで1972年に録音されました。Blue Lous Marini曰く、この曲はJimi Hendrixとイギリスの有名ロックバンドであるCreamのロックスタイルを反映させたものである、ということです。オーケストレーションはビッグバンドとしては簡略化されており、それ故独自のムードを醸し出しています。これもワンオクロックの録音だから格好いいのかも知れません。
面白い声の録音も入っていますね。これはトロンボーンのNick WlodarczykとピアニストのColin Cambellによるものですが、遊びが感じられ楽しい出来栄えです。また曲全体を通じScott Kruserのロックスタイル・ギターが大変効果的です。ソロはバリトンサックスDustin MollickとトロンボーンのKevin Hicksで、ともに大変高い演奏能力をしめしています。
続いては学生コンポーザーKevin Swaimによる“Nail in the Coffin”。彼曰く、この曲は、昨今のビッグバンドでは暗く破壊的な曲が多い中、それとは反対に何か“happy”なものを自然に描きたかった、とのこと。なるほど、大変聴きやすく勇気がわく雰囲気で、とても好感のもてる曲となっています。フィーチャリングソロはアルトサックスのAdam Hutchesonで、まさに曲のコードチェンジを“nail(俗語で“うまくやる”)”しています。
この曲ではダイナミクスも聴きどころであり、全体のピークからエンディングへ向かうディクレシェンドまで、見事にビッグバンドの持つ演奏のダイナミクスの幅が描かれているといえるでしょう。
“Doublethink”はトロンボーンのSean Nelsonにより書かれたもので、ミディアムテンポの大変思慮深い作品となっています。そのメロディ、コード進行、展開、ドラマティックなオーケストレレーションはワンオクロックの前ディレクターであるNeil Slaterを彷彿とさせるものであり、彼はその影響を強く受けている事は間違いないでしょう。この曲を聴いていると自分がワンオクロックの時にNeilの曲を演奏した時の感覚がリアルに蘇ってきます。見事なソロはアルトサックスのDevin EddlemanとトランペットのKevin Whalenで、その曲解釈は完ぺきです。
次の曲はBill Holmanによってアレンジされたジャズ・スタンダード“Yesterdays”です。何度聞いても感心せずにはいられない、ビッグバンドチャートとして屈指の美しさを持つ素晴らしいアレンジです。こんなに細部にわたりきめ細かく、かつシンプルに聞こえるアレンジは他に思い浮かびません。Bill Holmanはこの曲をStan Kentonの“Contemporary Concepts”というアルバムのために書いたのですが、彼はこのLAB2011のワンオクロックの録音を聞いたところ、Stan Kentonの演奏よりも良い、と感想を伝えたそうです。アンサンブルの見事さもさることながら、やはり学生とは到底思えないテナーサックスのBrian Clancyの成熟したプレーに感動を覚えます。そして忘れてはいけないのがテナーソロ後のわずか数小節ではありますが、リードトランペットのDan Fosterのストレートメロディソロ。まさにビッグバンドの醍醐味ともいえる場面で最高のリードプレイを聞かせます。いやはや、痺れる演奏です。
続いては先ほども述べたワンオクロックの伝説的な前ディレクターであるNeil Slaterその人による作曲“ Special Interest”。彼は2008年の引退後もノーステキサス大学のあるDentonというテキサス州の町に住み続け、こうしてワンオクロックとの交流を続けているわけです。余談ですが、現ワンオクロックのディレクターであるSteve Wiestがワンオクロックの現役プレーヤーであった1985~1988にNeilがディレクターとして登場した頃であったわけで、二人の縁の深さのようなものを感じざるを得ません。曲ですが、Neil特有のシステマティックにテーマを発展させていく芸術的手法が如何なく発揮されているといえるでしょう。彼のビッグバンドアレンジの技術は現存するジャズコンポーザーとしては屈指のレベルである事に何の疑いもありません。 Brian ClancyとPete Clagettのソロはその“Special Interest”を最初から最後まで惹きつけるのに最高の仕事をしています。
Lab2011最後の曲は現ディレクターであるSteve Wiestによる“The Last Theme Song”。
これはどうも解釈が難しく・・(笑)。彼の話によればジャズにあまり精通していない聴衆がビッグバンドジャズは70年代の刑事モノのテーマソングみたい、という反応がありそれに触発されて書いたものだそうです(笑)。つまり、70年代の刑事ものテーマソングみたいなものを本当に現代のビッグバンドに書いてやろうじゃないか、と。それに現代のデス・メタル調のリズムを交えた遊び心のある大変ユニークな作曲となっております。そのバックグランドを知ればこの曲をより楽しんで聴ける事かと思います。ここでもソロ含め曲全体を通じてScott Kruserのギターが大変効果的です。ギターを上手に使える事もワンオクロックのひとつの特徴といえるでしょう。
自分がワンオクロックに在籍したのが2006から2007ですから、あれからもう約5年がたとうとしています。自分にとってグラミー賞6度ノミネートのワンオクロックラブバンドはまさに夢のバンドで、渡米前から学生という範疇でとらえていなかったのですが、今回LAB2011を聞いて、未だにワンオクロックが世界最高峰のレベルにある事に安心するとともに、自分の原点である「憧れ」を思い出し大いに刺激になりました。本場アメリカでもジャズは大衆性を失いジャズを志す若者は減少しているという話を聞きますが、そのような中でも、ワンオクロックラブバンドがいつまでも学生の域を超越した世界的なバンドであってほしいと切に願っています。そしてワンオクロックラブバンドを目指す若者がここ日本からもどんどん出てきて欲しいです。
(2012年2月 長島一樹)
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