1. | The New Intermission Riff [ R. Wetzel / arr. Kim Richmond ] ( 5:28 ) |
2. | Softly As I Leave You [ Antonio De Vita / arr. Dale DeVoe ] ( 3:34 ) |
3. | El Viento Caliente [ Paul Baker ] ( 4:23 ) |
4. | Long Ago and Far Away [ J. Kern and I. Gershwin / arr. レニー・ニーハウス ( Lennie Niehaus ) ] ( 3:01 ) |
5. | Artemis & Apollo [ Johnny Richards ] ( 4:24 ) |
6. | Five & Dime [ Rich Woolworth ] ( 4:34 ) |
7. | This Could Be the Start of Something Big [ Steve Allen / arr. Scott Whitfield ] ( 3:03 ) |
8. | Our Garden [ Bob Florence ] ( 54:54 ) |
9. | Swing House [ Jerry Mulligan ] ( 2:44 ) |
10. | Tonight [ L. Bernstein / arr. J. Richards ] ( 35:35 ) |
11. | Joint Tenancy [ Steve Huffsteter ] ( 4:54 ) |
12. | Invitation [ B. Kaper / arr. Kim Richmond ] ( 6:56 ) |
13. | The Shadow of Your Smile [ J. Mandel / arr. Joel Kaye ] ( 26:26 ) |
14. | Crecent City Stomp [ Eric Richards ] ( 5:54 ) |
15. | (Bonus Track) Crecent City Stomp [ Eric Richards ] ( 4:33 ) |
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マイク.ヴァックスのケントンOBバンド、近年実に活発に活動していて、かなり短いスパンでアルバムが出て来ます。素晴らしいことだと思います。世の中にはリーダー亡き後も存続するいわゆるゴーストバンドってのが沢山あります。亡くなったバンマスの名前にすがってるところはまさにゴーストバンドでつまらないのですが、名前にすがるのではなく、そのバンドリーダーへの敬意と音楽への愛情と誇りがきちんとしているバンドっていうのは良い所が多いのです。マイクのこのバンドはまさにそういうバンドでしょう。ケントンはゴーストバンドを作るなって言ってたそうですが、こういう矜持を持ったバンドなら承諾しているでしょう。
オープニングはケントンの名刺代わりな曲、New Intermission Riffが来ました。アレンジはキム.リッチモンドですが、原曲にかなり忠実な感じがします。ケントンOBとしては単純に同じものはやらない、という意気込みでしょう。マイク.ヴァックスはシメのハイノートで元気なところを見せてくれます。
2曲目はSoftly as I leave you。こういうバラードでの5tbの分厚さっていうのはいいなぁ。ミュートでのラッパのソロはドン.レイダー。ハーマンやホルマンで活躍した人で、もう75くらいの年齢なんですが、この人上手いんだよなぁ。元気なところが聞けて個人的に嬉しいトラック。
3曲目はラテンのEl Vient Caliente。熱い風、そのまんまな感じ。テーマでのマイク.ヴァックス、多少のピッチのブレなんかお構い無しにブリっと吹きます。この人、去年ブラスバンドのゲストでアーバンとかを吹いた作品があって、その時もいいかんじにべらんめぇな調子だったのが印象的だったんですが、こういうキャラなんですね。
4曲目はスタンダードのLong ago and Far away。アレンジはニーハウス。これはもしかすると一般に入手できる譜面かもしれないですね。このバンド、一糸乱れぬっていう感じではなくてちょっと緩い感じなんですが、サウンドそのものは豪快なんですよね。ある意味今の若い人にはできないサウンドではないかと思います。
5曲目はジョニー.リチャーズのArtemis and Appolo。ケントン王道なサウンドですね。トゥッティのブラスの厚み、こういうのは日本ではなかなかお目にかかれません。ドン.レイダーのフリューゲル、味わい深くて素晴らしいです。
6曲目はRich WoolworthのFive & Dime。5拍子変形ブルース。このアレンジャーの人のことはよく分からないのですが、多分マイクの友人なのではないかと。Facebookに本人発見しました。
7曲目はThis Could Be Start of Something Big。歌入り。歌はスコット.ウィットフィールドとジンジャー.ベルグルンドの2人。スコットはトロンボーンが本業ですが、このチームで歌ったりもしてるんですよね。スコットからはfacebookでこのデュオチームのファンクラブに入れって言われて登録してますが、演奏は初めて聴きました。芸達者だなぁ。ボントロのソロも強力です。スコットのトロンボーンについては、カール.サーンダースがフォンタナより凄いかもしれないって言っているのを聴いたことがあります。
8曲目はOur Garden。これ、ボブ.フローレンスのI'll Rememberにヴォーカル乗っけたものです。転調してあって、オリジナルのテナーとピアノのデュオパートがトロンボーンになってる。ボブが聴いたら喜んだだろうなぁ。
9曲目はマリガンのSwing House。あれ?なんかこれだけ物凄くこもった感じに聴こえるなぁ。複数会場の録音からピックアップしたのか、歌の時にバランスいじったのかどっちかな?マリガンのアレンジ良いのでちょっと残念。
10曲目はジョニー.リチャーズのアレンジでバーンスタインのTonight。ケントンのバラードで全員長い音でアンサンブルするようなスタイルって独特のゴージャス感と分厚さがあって良いんですよね。やってる方は大変なんだけどね(笑)。
11曲目はスティーブン.ハフステッターのオリジナル、Joint Tenancy。ドン.レイダーとの2tp。ヴァックス親分とベテランのレイダーに挟まれてこの人に1曲しかソロが回ってこないっていうのは勿体ないですよねぇ。2人ともバリバリですよ。素晴らしい。
12曲目はキム.リッチモンドのアレンジによるinvitation。キム.リッチモンドほぼ全編吹きまくり。
13曲目、The Shadow of Your Smile。アレンジはバリサクのJoel Kaye。お、テーマでバスフルート吹いてる。低音フルートっていい音するんだよなぁ。この飛び道具は魅力的。このテーマの16小節だけの為にバスフルート持って来るっていうのが素晴らしいよね。
14曲目、クロージングはジョニー.リチャーズのCrescent City Stomp。私が知らないだけなんだろうけど、ジョニー.リチャーズがセカンドライン的なリズムのブルース書くとは想定外。クロージングらしい陽気で盛り上がる曲です。ボーナストラックはradio editって書いてるけど、タイコのソロのところ少し削ったのかな?
マイク.ヴァックスのアルバム、前回のは音質的に「?」だったのです。今回のも会場にマイク3本くらい立てて録音したのを多少編集しただけな感じがします。PCとかの技術の進歩のおかげで、PC一台あれば全部できちゃうんだから、無駄にコストかけないでこういカタチで作品出すのもアリなのかもしれないなぁ、という気にもさせられます。ただ、演奏も含めてやはり粗い部分が出ちゃうので、そこをどう考えるか、で好みが分かれるんでしょうね。
ある意味1950年代のライブ録音みたいな方法でアルバム作っちゃってるんでしょうが、このやり方には、インディーズで作品作る人には大きな示唆を含んでいると思いますよ。あと3年もしたら映像とセットなものを作るんじゃないかな。
(2010年4月 辰巳哲也)
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