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ベル・ミュージック・プレスによるニュー・コンサート・ピースの第2弾がリリースされました。
「アーデンの森のロザリンド/ニュー・コンサート・ピース2005」(BELL-0501)に続くこのCDは、諸般の事情から「2007」として今年2月11日の発売となりましたが、今回もアメリカ、イギリス、オランダの出版社から発売された、ミュージックストア・ジェイ・ピーで取り扱っている中級〜上級バンド向けの吹奏楽オリジナル曲7曲と、ベル・ミュージック・プレスから出版された福島弘和と矢部政男の純和風の雰囲気を持つ新作2曲を収録しています。
演奏は前回同様、関西を中心に活躍するプロ吹奏楽団、フィルハーモニック・ウインズ 大阪(オオサカン)、指揮は音楽監督の木村吉宏です。
表題曲の「吹奏楽の為の交響的舞曲『月の宴』」は、1993年の吹奏楽コンクール課題曲「マーチ・エイプリル・メイ」などで知られる矢部政男の本格的な吹奏楽オリジナル曲です。作曲者がフルート奏者として所属する航空自衛隊航空中央音楽隊の委嘱で作曲され、2005年6月19日に東京のすみだトリフォニーホールで開催された第44回定期演奏会で中村芳文1等空尉の指揮により世界初演されました。
踊りのリズムに貫かれた演奏時間16分半にも及ぶこの曲は、妖美な月夜に繰り広げられる物の怪たちの宴を思い描いて書かれた、絢爛豪華な音楽絵巻となっています。航空自衛隊航空中央音楽隊の高い演奏技術と充実した編成を想定した大規模な作品となっていますが、コンクール向けにカットして演奏することもできるようになっています。
「ニュー・コンサート・ピース2005」にもその作品を提供していた福島弘和の新作は「梁塵秘抄」と名付けられています。梁塵秘抄とは平安時代後期に後白河法皇が今様と呼ばれる当時流行した歌謡を編纂したもので、現在では多くの部分が失われていますが、その中には法文歌や風景を歌ったものがまとめられています。この時代には上皇による熊野詣が頻繁に行われていましたが、後白河法皇は34回も参詣し、梁塵秘抄にも熊野の歌や熊野が登場する歌がいくつかあります。
「熊野古道の幻想」というサブタイトルが付けられたこの曲では、熊野に題材を求めていた作曲者が阿弥陀如来の浄土とされた熊野の情景と、今様で歌われた歌謡とが対照的に描かれています。
さて、アルフレッド・リードの遺作と言える「ファンファーレとプロセッショナル」や、マーク・キャンプハウスとヨハン・デ・メイがそれぞれシカゴのノースショア・コンサート・バンドの創立50周年記念委嘱作品として作曲した「シンフォニック・プレリュード(コルヴィユ=シュル=メールの墓地)」と「ウィンディー・シティー序曲」といった注目すべきオーソドックスな作品もさることながら、このシリーズならではのコンサートの企画に好適な「使える」レパートリーにもおもしろい曲が揃っています。
イギリスの作曲家で指揮者、プロデューサーとしても活躍しているローリー・ジョンソンは、日本でも放送され話題になったイギリスの人気TVシリーズ「おしゃれ(秘)探偵」やスタンリー・キューブリック監督の映画「博士の異常な愛情」の音楽などで広く知られています。
吹奏楽曲も作曲しており、イギリスの軍楽隊の委嘱で作曲した「イギリスの城」「ページェント」「To The Few/英空軍に捧ぐ」などでは自身の指揮による自作自演盤も残されています。ここに収録されている「ロートレックの3枚の絵」はコールドストリーム・ガーズ・バンドの委嘱で作曲されたもので、同バンドの来日記念CDにも収録されていました。
後期印象派のフランスの画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの「サーカスにて〜曲馬師」「赤毛の少女」「踊るショコラ」の3枚の絵からインスピレーションを得て作曲された組曲で、軽快な音楽はコンサートに彩りを添えるでしょう。
さて、フィルハーモニック・ウインズ 大阪は2007年10月の第4回定期演奏会で、客演指揮者にギリングハム を招聘する予定になっています。デイヴィッド・ギリングハムの作品としては前回に「こだまは鳴りやまぬ」を取り上げていますが、今回の録音では大阪を中心に活動するハンドベル・クワイアのベル・フィリアを迎えて、ハンドベルをフィーチャーした「ノー・シャドウ・オブ・ターニング」で熱の入った演奏を聞かせてくれています。賛美歌第二編191番「主のまことはくしきかな」の旋律によるコラール幻想曲のスタイルで書かれた、ギリングハムらしい響きに満ちた作品です。
ロバート・ラッセル・ベネットの名曲「古いアメリカ舞曲による組曲」は、作曲後半世紀がたち、近年フルスコアを作成しパート譜の誤りを正した新しい校訂版が出版されましたが、これとともにジェイムズ・カーナウが組曲の中から「ウェスタン・ワンステップ」「壁の花ワルツ」「ケークウォーク」の3曲をグレード3の比較的小さい編成用に編曲したセレクションが登場しました。編成や技術的な理由から手を出しにくかったバンドにも演奏していただけるでしょう。
そしてアルバムの最後を飾るのは、ビッグバンドのジャンルで活躍するゴードン・グッドウィンが吹奏楽のために書いた「より勇敢に、より強く」です。トランペットのソロで始まるこの曲は、2001年9月11日のアメリカの同時多発テロで亡くなった人たちへの追悼だけでなく、アメリカ人を勇気づけるものとなっており、静かでしかし力強いバラードはコンサートのアンコールにもピッタリでしょう。
作曲者自身が演奏に加わった自作自演のビッグバンド版も「The Phat Pack」(284404-2)としてリリースされていますので、聞き比べてもおもしろいかもしれません。
このCDの制作にあたっては、キャンプハウス、デ・メイ、ギリングハムからメッセージが寄せられており、海外からも注目されていることを伺わせます。
ベル・ミュージック・プレスから出版された2作品はもちろんのこと、収録曲の楽譜はすべてお取り扱いしています。コンクールやコンサートに最適なお薦めの9曲をぜひお楽しみください。
なお、フィルハーモニック・ウインズ 大阪はこれまでに2回開催した定期演奏会のライブ録音をすべてCD化し、「オオサカン・ライブ・コレクション」としてリリースしています。記念すべき第1回定期演奏会を収録した「デイ・オブ・ザ・ドラゴン」(YGMO-1001)、オランダ吹奏楽界の巨匠ハインツ・フリーセンを客演指揮者に迎えた第2回定期演奏会を収録した「ミクロトピア」(YGMO-1002)も好評発売中です。
(2007.02)
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